ニコンのカニ爪を除去する

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ニコンの古いタイプのレンズに付いている、通称「カニ爪」と呼ばれているパーツを外してみました。代わりに取り付けるネジを買ってきて、長さを自分で調整しました。

カニ爪と呼ばれているレンズのパーツは、ニコンの説明に従うなら「AI方式より以前の露出計内蔵カメラを使用する際に必要」なもの。正式名称は「露出連動爪」です。カメラ本体がAI方式対応で、レンズもAI方式なら、カニ爪は不要です。

焦点になるのは、(当時の)進化版であるAI方式のレンズにも、カメラ本体が非AIだった場合に備えてカニ爪が付けられていることです。影にならないよう穴が開いたデザインのカニ爪は、基本的にAI方式のレンズに搭載されたもので、「念のために付いている」状態です。(AI方式レンズと非AI方式レンズの見分け方)

ニコンのマニュアルフォーカスのレンズにはずっとカニ爪が付けられていましたし、そうしたレンズを付けても問題ないように、カメラ本体もずっとカニ爪がぶつからないデザインになっていました。後方互換性を大事にするニコンらしいといえばそうですし、カニ爪はニコンのオールドレンズを象徴するディテールで、アイデンティティと捉える人も多いようです。

本体のNikonロゴの下、レンズに付けられているのが露出連動爪、通称カニ爪です

一方、現実的な部分では、カニ爪を必要としない組み合わせが大半であることに加えて、レンズ単体で持ち運ぶ時に緩衝材に刺さる勢いで扱いづらい、手に持つと痛い、という「そもそも無駄なのにけっこう邪魔をする」問題がありました。

また近年、ミラーレスカメラ+マウントアダプターでオールドレンズを楽しむというスタイルが増えた影響で、ニコンのカメラ本体を持っていなくても、カニ爪付きのニコンのオールドレンズを手にする人が増えたようで、そうした人たちにカニ爪は不評で、深く考えずに取り外してしまう人もけっこういるとか。

しかし、ニコンのサポートからアナウンスされているように、AI方式のレンズに付いているカニ爪を外してネジを戻しても、長さが合わずネジが浮いた状態になり、ちゃんと取り付けられません。また、「一度外した爪を取り付ける場合には取り付け精度が必要」という文言もあり、暗に「素人は手を出すな」と案内されています。

私はというと、一眼レフは基本的にニコンであるものの、今後カニ爪が必要になることはほぼなさそう、つまり非AI方式でカニ爪を使うタイプの露出計を内蔵したカメラ本体(F/F2のフォトミック、Nikomat)には手を出さなそう、という確率が高まったので、手持ちのレンズ1つのカニ爪を、自分で取り外してみることにしました。

ちなみにカニ爪の取り外しはニコンのサービセンター・修理センターで受け付けています。万全を期すなら公式サービスを利用しましょう。この記事の後半で紹介しています。

被検体は「Ai NIKKOR 35mm F2.8」です。レンズによってネジの規格が違う可能性は捨てきれないので、もし仮に実践するなら実測することを強く推奨します。

まずこのレンズのカニ爪から外したネジですが、長さは2mm、太さは1.32mmでした。現在手軽に買えるネジの規格に照らし合わせると、「M1.4×2」ということになります。ピッチも現代のものと同じようです。交換する新たなネジとして、秋葉原にある千石電商の2階を訪れ、鉄製で黒色の「M1.4×2」(10個入り)を買いました。ちなみにこの新たに買ったネジの太さの実測値は1.35mmでした。

カニ爪をとめているネジ
カニ爪を外した部分。どうやらこの穴が曲者の模様
標準のカニ爪のネジの長さは2mm
太さは実測1.32mm、規格としてはM1.4に相当します
左がカニ爪のネジ、右が千石電商で買ってきた「M1.4×2」のネジ。皿の大きさが違いますがネジの規格は同じにみえます
買ってきた黒いM1.4のネジの太さは実測で1.35mm。カニ爪のネジの実測値とほぼ同じです

外したネジの長さである2mmのままでは、ニコンから案内されているように長すぎます。穴の深さは2.5mmほどあるのですが、奥がすぼまっているのか、2mmのネジが最後まで入りません。カニ爪の厚さは0.72mmのため、ネジがレンズ本体に埋まっている長さは、約1.3mmという計算です。

ざっくり2mmのネジの長さを半分にすれば、ちょうどいい塩梅になると思われます。そこで、新しく取り付ける黒いネジをニッパーでだいたい半分にカットしたら、浮くことなく取り付けられました。

カニ爪の厚さは0.72mm
カニ爪のネジが本体に埋まる部分は約1.3mm
半分にカット
刃の形状のせいか、けっこうネジ山にしわ寄せが……

ネジは普通の線材よりも硬いので、太さ1.35mmとはいえ、生半可なニッパーではカットに適しません。私はツノダの「CN-130NS」を使い、刃こぼれはしませんでしたが、正直ニッパーの切断能力的には微妙だと思いました。刃こぼれしたくないなら、けっこう強力なニッパーが必要です。また、切断時にネジ山がすこし歪んでしまったので、刃先がフラットタイプのニッパーのほうがいいと思います。

とりあえず浮き上がることなく取り付けられました

さて、私がビビっていたのは長さよりも、ニコンが言う「取り付け精度が必要」という部分です。これは締め付けトルクを既定値にするとか2つのネジで締め付けトルクを揃えるとか、そういうことだと想像していたのですが、正解はわかりません。ネジを外す時、かなり固かったので、締め付けトルクはけっこう高そうでした。

念のため校正サービスに出した東日のトルクドライバーを用意し、両方の締め付けトルクをほどほどの固さに揃えよう……と思ったところ、片方のネジの動きがアヤシイことに気付きました。微妙に空転する感触で、強く締め付けられません。何度かネジを付けたり外したりしていたので、レンズ本体側のネジの溝がゆるくなったと考えられます。本体側の素材はけっこう柔らかそうです。前述のようにカットしたネジの先端が歪んでいて余計な溝を作るなどの悪さをしたかもしれません。

張り切って校正済みトルクドライバーを用意したのですが、違ったかもしれません

もしかしたら、これがニコンのいう「一度外した爪を取り付ける場合には取り付け精度が必要」という部分かもしれません。つまり、2回目からはかなり慎重に戻さないと、ネジ山(溝)を新たに作ってしまい、ちゃんと締め付けられなくなる、という指摘だった可能性があります。これも正解かどうかはわかりませんが……。

撮影中にレンズがバラバラに分解してしまうようなことはないでしょうが、要経過観察ということで、問題が起こったらまた報告したいと思います。

カニ爪を除去したレンズをカメラに装着してみましたが、個人的にはあまり違和感を感じず、「ニコンのクラシックなスタイル」という雰囲気が、少しだけ後退したように感じられます。レンズを単体で持ち運ぶ時にはカニ爪が痛くてけっこう邪魔だと思っていた方ですし、これはこれでアリではないかと思っています。

カニ爪がある状態
カニ爪を除去した状態
「なんか物足りない」と感じるかと思いきや……あまり違和感はないというのが正直な感想です

ニコンで取り外してもらう

ニコンのサポートページで案内されているように、ニコンサービスセンターでは露出連動爪の取り外しを受け付けているので、上記とは別のレンズで“公式の取り外し”を依頼してみました。

新宿にある東京サービスセンターに赴いて(要予約)、依頼したところ、「施設の中で作業でき、1時間ぐらいで完了する」とのことで、サクッと1時間後に受け取れました。料金は無料でした。

作業内容は、爪とネジを取り外し、代わりに黒い化粧ネジが取り付けられるというものです。外した爪とネジは返却されます。

ニコンサービスセンターで露出連動爪を取り外してもらったレンズ
黒い化粧ネジが取り付けられています
取り外した爪とネジは返却されます

黒い化粧ネジの規格は受付スタッフいわく「少し特殊」とのことでしたが、たいていのホームセンターでは扱っていないサイズですし、おそらく長さのことではないかと思われます。せっかくなので(?)、せっかく作業してもらったのに、ネジを1本取り外してチェックしてみました。

結果はというと、太さは実測で1.35mm、規格としてはM1.4のネジで、長さは1mmでした。

千石電商で買ったネジのちょうど半分の長さです。千石電商(閉店した秋葉原・西川電子部品のネジ販売事業を承継)で買えるM1.4のネジは1.5mmが最短で、ステンレス製の銀色なので、自分で用意するならM1.4×2の鉄製の黒色を買ってカットするのが近道といえそうです。ただ上記にもあるようにカット後のネジ山の歪みには注意する必要があります。

左が千石電商で買ったM1.4×2。右はニコンサービスセンターで取り付けられた黒い化粧ネジで、長さは1mmでした。ピッチは同じようです
ニコンサービスセンターで取り付けられた化粧ネジ、太さは1.35mmでした

サポートがいう「取り付け作業に精度が必要」という部分ですが、自分の経験を含めて総合すると、ネジを戻す時の作業に最新の注意を払う必要がある、ということになりそうです。このネジを取り付ける絞り環の材質は金属ですが、想像以上に柔らかく、適当にネジを戻すとネジ山が新たに溝を作ってしまいます。そうなると最終的にビシッと締め付けられなくなります。

これを回避する方法ですが、ネジを穴にあてがった後、一旦「反時計回り」に回し、ネジ山が溝に「コトン」と落ちて合致する場所を探り、そこから慎重に「時計回り」に回して入れていく、というものです。トルクが必要以上にかかりすぎないよう、グリップが細めのドライバーを使うのも慎重な作業には有効です。「なんか重くない?」と感じたら、すぐに引き返します。ドライバーの先端はプラスの0番です。

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